サッカー審判員として、日大のアメフト事件で思うこと

あえて事件という表現を取りましたのは、個人的な感覚としてこれは事故ではなく事件であると考えているからです。

僕自身はアメフトのルールを全く知りませんでしたが、今回のことを契機に少し調べてみました。
今回、パスを出し終えた関大の選手に後ろからタックルを行った反則は、「パーソナルファウル」という判定だったようです。(アンネセサリーラフネスはパーソナルファウルに含まれるようです)
ちょっと不確かですが、パーソナル・ファウルは3回で退場処分になると書いてあるところがありますので、サッカーで言うところのイエローカードに近い意味があるでしょうか。

ただし、程度のひどい場合はすぐに資格停止(退場)、いわゆる一発レッドという処分になる場合もあるようです。

とにかく、今回の判定は現場では一発では退場にならないパーソナルファウルとされたと。


審判としての視点からすると、この判定がどうだったか、という話になります。
実際、後日「ひどいパーソナルファウル」とされたようで、退場が妥当だったということになっていますので、現場での判定は甘すぎたということです。
簡単に言えば、誤審の一種ですね。


で、悪質なファウルは起こらないに越したことが無いものですが、起こってしまったものに対して審判がその場で正しくジャッジできない可能性は十分あります。
それは人間がジャッジしている以上、ある程度仕方のないものです。

ただ、今回のような悪質なファウルが発生する背景には、日ごろからジャッジの基準が甘いことが常態化していた、という懸念があります。


いったん、善悪やモラル、感情的な話は横に置きます。

勝利するという目的のもと、プレースタイルを選択する権利は各チームが有しています。
そのうえで、有用かどうかは別として、ルールを度外視したプレーを選択することは、一応、自由であると言えます。

まっとうな運営がなされている試合では、ルールを度外視したチームは勝利できませんので、勝利という目的を果たせず、淘汰されていきます。

ここで今回このような事案が発生したということは、以下の2パターンが考えられます。

1.この試合に限って何かが暴走し、危険なプレーが起こった
2.ルール度外視のプレーが淘汰されておらず、今回も危険なプレーが起こった

今まで起こらなかったことが、今回初めて起こるということはあり得ます。
しかし、事件前後の日大監督のコメント、一部ではアメフトではある程度危険なプレーは普通というような意見があるようであることなどを考えると、どうもそうは思えません。


スポーツは、お互いがフェアにプレーすることを期待して行われますが、それは保証されてはいません。
勝負に勝つことに盲目的になり、危険なプレーを選択してしまう可能性は排除できないのです。
そういった異分子が出てきた場合のために審判がルールを正しく適用して、芽が小さいうちに摘み取る必要があります。

どうも、今回の一連の顛末をみていると、審判団や協会に存在感がなく、フェアプレーへのインセンティブがうまく働いていなかったように思います。

日大から関大へ報告書が届いたとかいう話ですけど、関係者同士が直接話をするだけというのもおかしな状況です。
この試合を主催したのは関東学生アメリカンフットボール連盟という団体だそうですが、関大はまず連盟に話をするべきだと思います。


今回の件は、審判がファウルを正しく判定していくことの大切さを示していると思います。
アメフトよりリスクは少ないですが、サッカーも選手同士のコンタクトがある競技であり、4級とはいえその審判組織の末端にいある自分も、 気を引き締めてジャッジをしていく必要性を再認識しました。

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